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建築計画とは


建築計画(学)に関する評価が、このところの日本では、ことさらに厳しいようだ。建築家を中心とする実務家サイドから は「設計に役に立たない」といった問題提起をうける一方で、他の学問の領域からの科学的なアプローチが不十分でなはない かと」という批判にさらされているとも聞く。
こうした状況では、「科学的であり、かつ知の応用の学として有効であること」を目指した建築計画黎明の主張が、複雑化し た現代社会においては「結局中途半端なのではないか」という疑問をつきつけられているようにも見える。

けれど、本当にそうだろうか?

我々の社会を構成している様々な「諸関係」は、空間として編成されることを通して現前する。そして今度は、空間編成そ れ自体が、社会の具体的なイメージとして人々に受け入れられていく。このように、「空間」をめぐる抗いの「時間的な履歴」 であり、人類の歴史すら、こうしたはかない「空間」を建築・都市という物理的な構築物によって具体的に定着する試みの集 積であるということも可能だろう。

こうして考えてみると、「空間」を切り口として「社会」を観、場合によっては、内部観察者としてそれに積極的に関与して いこうとする日本の「建築計画」の立ち位置は、実に的を得ているように思えてくる。もちろんそれは、そう簡単にいく道の りではない。ここでいう「空間」とは通常信じられているような空っぽの入れ物のようなものではないからだ。

「いかなる空間も社会関係を伴い、それを含み、それを包み隠している。空間は事物というよりは、むしろ、事物相互の一連 の連関である。」(ルフェーブル、空間の生産、p142)

哲学者ルフェーブルが述べるように、人間が動き、知覚し、そして場を意味づけることによって逐次生み出されるダイナミッ クな観念であり、その扱いは非常に難しい。

我々の研究室では、我々が立脚すべき立場を「『空間』という概念装置を用いて『社会』にそして『人間』をみる科学」とし て捉えており、「空間」概念の拡張とその実践に力を注いでいる。具体的には、それらは並行して進めている三つのフェーズ の活動としてまとめることができる。

①人間の行動や知覚を通して空間(概念)が生成されていく現場を科学的態度で観察し、そこにひそむ構造や関係性を見出す。

②それら知見(過去、他者から得たものを含む)を統合・総覧してこの時代に望まれるプログラムを案出する。さらに条件が 許せば優れた建築家とのコラボレーションを介して、それを建築物として具現化する。

③こうして実践における介入を通して、空間構成にまつわる権力の諸関係を明らかにし、その応用敵展開についての構想を練る。

活動は、まだまだ緒に就いたばかりである。

21世紀型社会のありようを実践的に示していくためにも、様々な才能との出会いを大切にしながら志を貫徹していきたい。


小野田泰明(建築計画者)