避難所の自然換気 簡単高速シミュレーション

■当プロジェクトの目的
 新型コロナウィルスの拡大局面において、水害や震災等の自然災害が発生した場合には、避難所となる体育館等で有効な換気・通風を確保するための窓開けが必要になります。しかしながら、適切な換気・通風を実現する条件を明らかにすることは容易ではありません。そこで、本プロジェクトは標準的な体育館の建物形状パターンをパラメトリックに調整し、外部風条件を決定するだけで迅速に流体シミュレーションを実施し、換気・通風の予測評価を行うシステムを開発することを目的として活動しています。また、私共はその成果を広く無償公開します。ダウンロードされた方がプログラムを自由にカスタマイズすることを認めますが、シミュレーション結果に関しての責任は負いかねます。上記に同意される方に限り使用いただきたい点をご理解・ご了承願います。
 なお、本プロジェクトは、東北大学大学院 都市・建築学専攻(小林光、石田泰之)、高木秀太事務所(代表:高木秀太、開発サポート:飛田剛太)、大成建設株式会社 設計本部(開発代表者:福田純)他のコラボレイトによって推進されています。

■ツールの概要
・このツールでできること
 避難所として利用される体育館において、効率良く自然換気(窓開け換気)のシミュレーションを行えます。なお、体育館の建物形状やパーティションの配置を簡易に再現することができます。

・得られるデータ
 自然換気時の換気量の算出、建屋内の風速の空間的な分布の可視化。効率良く換気が行われている場所・効率の悪い場所の可視化(換気効率指標SVE3の可視化)。

SVE3
(1) パーテーションを設置する前       (2) パーテーションを設置した後

図 換気の効率を数値化した例(SVE3の可視化)

・デモ動画




・動作に必要なソフトウェア
CFD解析ソフトFlowDesigner(FlowDesigner2019以上)
モデリングソフトRhinoceros®(Rhino 6以上)

■換気効率指標SVE3とは?
 室内の換気は、「換気量」と「換気効率」で評価できます。
 「換気量」は、室内に入ってくるきれいな外気の量で、必要な換気量が定められています。「換気効率」は、きれいな外気が室内にどのように分布しているかを表す指標で、その一つに「空気齢」があります。空気齢は室内の各所に空気が届く平均時間を表します。そして、空気齢の空間分布の様子を表すのがSVE3(Scale for Ventilation Efficiency 3、定義:室内各所の局所空気齢を名目換気時間で基準化した値)です。

SVE3
図 換気効率の指標のひとつSVE3(空気齢)

 室内に給気された空気は様々な経路を経て点Pに届きます。点Pの空気齢は各経路をたどって空気が点Pに到達する時間の平均値です。空気齢は供給された空気が室内に均一に届く場合、室内全体が1.0になります。また、空気齢は、その値が小さい=新鮮空気がより早く届く(換気効率が良い)、空気齢が大きい=空気がゆっくり届く、或いは淀んでいる(換気効率が悪い)可能性があることなどを示します。

・ゆっくり届く⇒多くの人の呼気の影響を受けている可能性が高い
・よどんでいる⇒呼気が排出されにくい

とみなせるので、感染症の拡大リスクを低減することを考えると、SVE3の値が小さい環境の方が好ましいと考えられます。



■プログラム更新履歴
 ver5.06 20/12/25 一般公開
 ver5.07 20/12/28 pathtoolプラグイン削除
 ver5.08 21/02/01 メモ欄文言追加
 ver5.09 21/02/12 FDファイルの出力エラーの修正
 ver5.10 21/02/22 円形屋根のメッシュ分割アルゴリズム改変
 ver5.11 21/04/12 SVE3出力値修正、メッシュ分割パラメータの追加
 ver5.12 21/04/15 キャットウォークバグ修正、メッシュ分割バグ修正
 ver5.13 21/09/01 SVE3値色修正
 ver5.14 21/09/02 SVE3値色再修正
 ver5.15 21/09/05 換気回数、瞬時一様拡散濃度表示

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